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耐熱性と断熱性の違いを解説!熱に強いスーパーエンジニアリングプラスチックの選定と加工事例

はじめに

「熱に強い素材を紹介してほしい」

お客様からこのようなお問い合わせを頂くことがあります。

熱に強い素材は、用途によって耐熱材、断熱材などさまざまありますが、お問い合わせの中には、耐熱と断熱を混同されるケースも少なくありません。

当記事では、しばしば混同されがちな耐熱と断熱の違いを明確にし、各素材の最適な使用例と、よくある問い合わせの事例をご紹介します。

耐熱と断熱の違いを正確に理解し、適切に素材を選定しましょう。

耐熱と断熱の違い

耐熱

(1)定義
『耐熱』とは、材料が熱によって機能劣化(変形、融解、分解)することなく、一定の温度範囲で安定して機能を維持することを意味します。

耐熱材は高温環境下での使用に適しており、特定の温度範囲内で物理的、化学的特性を維持する能力を持っています。

(2)用途
航空宇宙産業でのエンジン部品や自動車の排気システムといった、高温下での操作が必要な場面で使用されます。

例えば、テフロンやPEEKは電子部品の絶縁体や化学プラントのシール材として利用されます。

断熱

(1)定義
『断熱』とは、材料内外の熱の伝達を低減することで、熱が外部に逃げるのを防ぐ、または外部からの熱の侵入を阻止する性質を指します。

主に温度制御を目的とし、住宅や建物内への熱の伝達を抑えてエネルギー効率を高めます。

(2)用途
断熱材料は、建築分野での壁や屋根の断熱、冷蔵・冷凍機器の断熱層、HVACシステムでの熱損失防止などの場面で使用されます。

このような用途では、熱損失を最小限に抑えることが求められます。

また、工業分野では、TCボードのような断熱材が工業炉や成型機の断熱板として用いられ、機器のエネルギー効率を高めると同時に、操作環境を安定させるために重要な役割を担っています。

材料選定のポイント

耐熱性と断熱性の違いを理解することは、適切な材料を選定するにあたり非常に重要です。

選定には性能の違いだけでなく、長期的なコスト効率も考慮する必要があります。

耐熱樹脂は、高温での性能を維持する能力が非常に高く、価格も高いですが、利用用途によってはそれに見合う投資効果(耐熱性)があります。

一方で、断熱材は、建築分野や産業設備で熱の伝達を抑え、エネルギー効率を向上させるために広く利用されます。

初期費用は比較的低いものの、耐熱樹脂ほどの極端な温度には対応していません。

しかし、日常的なエネルギー消費を抑え、運用コストの節約に寄与することで、長期的なメリットとなります。

岸本工業では、特に耐熱樹脂の精密加工に強みを持ち、高温環境下での性能が求められる産業用途に適したスーパーエンジニアリングプラスチックの樹脂加工経験を豊富に持っています。

また、断熱用途においては、当社の長年取引のある協力会社を通じて対応可能です。耐熱材料と断熱材料の選別に迷われた際にはお気軽にお問合せください。

耐熱性のある樹脂素材(スーパーエンジニアリングプラスチック)

耐熱性のある樹脂素材、一般にスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるこれらの材料は、高温環境下でも優れた性能を維持するため、航空宇宙、自動車、電子機器など、さまざまな産業で重宝されています。

ここでは、耐熱性のある代表的なスーパーエンジニアリングプラスチックである、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PTFE(テフロン)を耐熱温度、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性、コストの観点で整理しました。

上記以外の耐熱性のある樹脂素材をお探しの方は、こちらの記事もご参照ください。
プラスチックの耐熱性。熱に強い樹脂13選

PEEK、PPS、PTFEの当社加工事例は下記をご参照ください。
PEEKの加工精度について解説。岸本工業の精密加工や製作事例をご紹介します。
極薄!0.1t板厚加工【PPS編】
テフロン樹脂の切削加工における課題と岸本工業の極薄板厚加工技術をご紹介します

スーパーエンジニアリングプラスチックのコスト

スーパーエンジニアリングプラスチックは、日常で使われる家庭用品や包装材料などで用いられる汎用樹脂と比べて、耐熱性や機械的強度が非常に高い、高機能性樹脂です。

一般的には連続使用温度が150℃以上を超える耐熱性を持つ樹脂素材を指すことが多く、金属部品の代替として利用されることもあります。そのため、スーパーエンジニアリングプラスチックは汎用樹脂と比べて原材料自体のコストが高くなります。

例えば、食品包装のラップフィルムや屋外利用のビニールシートなどに用いられる汎用樹脂であるPVC(塩化ビニル樹脂)は、1kgあたり約200〜300円であるのに対し、スーパーエンジニアリングプラスチックの代表例であるPEEK(ポリエーテルケトン)は1kgあたり約2〜3万円と非常に高価です。

これにより、お見積もりの際に驚かれるお客様も少なくありません。
※原材料価格は2024年時点のものであり、市場の変動により価格は常に変動します。

しかし、上述の通り、スーパーエンジニアリングプラスチックは優れた機能を持つことから、さまざまな場面での活躍が期待できるため、一考の価値があります。

よくあるご質問

透明で熱に強い素材にはどのようなものがありますか?

当社では透明ポリカーボネートを推奨しています。

ポリカーボネートは、ガラスに匹敵する透明度を持ち、耐熱温度は120℃で熱にも強く、さらに衝撃にも強いため、飛行機や新幹線の窓、自動車ヘッドランプのカバーなどに使用されます。
※当社のポリカーボネート加工事例は「ポリカーボネートの切削加工を徹底解説!樹脂加工は岸本工業へおまかせください」を参照ください

ポリカーボネートよりコストを抑えつつ、より透明性を求めるのであれば、アクリルの利用をおすすめします。

ただし、アクリルの耐熱温度は70~90℃とポリカーボネートより低いため、用途に合致しているか精査が必要です。

なお、アクリルは水族館の水槽やコロナ禍で活躍した飛沫防止用の仕切りなどで使用されています。
※当社のアクリル加工事例は「樹脂とアクリルの違いを分かりやすく解説!特性や加工方法などもあわせてまとめています」を参照ください

500℃の環境下で使用できる素材はありますか?

例として、ベスペルが挙げられます。

ベスペルはデュポン社が開発したポリイミド樹脂であり、スーパーエンジニアリングプラスチックであるPEEKをはるかに上回る優れた耐熱性、耐摩耗性を持ち、航空宇宙産業や自動車産業などで使用されます。

しかし、一部供給が追い付かず欠品する場合があります。

そのため、岸本工業では、ベスペルの代替素材として、セプラを推奨しています。

セプラはグレードに応じてさまざまな優れた特性を持ちます。

中でも、セプラの「エキストラ」グレードは耐熱性が非常に高く、ベスペルに劣らず500℃の環境での使用が可能です。

その他、摺動性や酸素プラズマ耐性に優れたグレードがあり、用途に応じて最適なグレードを選択することが求められます。

※当社のべスペルとセプラの加工事例は以下をご参照ください。
ベスペルの加工を高精度・高品質で実現する岸本工業の技術をご紹介します
セプラは樹脂の中でも優れた耐熱性を持つ高性能なポリイミド成形体

まとめ

今回は、耐熱/断熱の違いと耐熱性が求められるスーパーエンジニアリングプラスチックの使用例をご紹介しました。

耐熱性や断熱性の高い素材に関する具体的なご相談や、特殊な条件下での素材選定が必要な場合は、岸本工業までお気軽にご連絡ください。

【お問い合わせ先】
電話 03-5703-8171
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