アクリル板とPP板の違いとは?
これらは、二つとも透明度が高い素材なので、半透明だとどちらがどちらなのか、見た目だけでは判別がつきにくいです。
しかしこの二つの材料には明確な差があり、全くの別物ですので、同じものだと思って製作物などの材料に選定すると失敗に繋がってしまうことがあります。
今回は、この二つの素材の特徴や性質とあわせて解説します。
どちらを選ぶか迷っている方は、この記事をご参考ください。
材料の種類に違いがある
まず大前提として、これらは同じプラスチックの仲間ですが種類に差があります。
「PP」とはポリプロピレンを略した表示名です。
そのため、ポリプロピレンという材料をシート状にしたもののことです。
ポリプロピレンとは
プロピレン(炭化水素)重合体の熱可塑性樹脂
一方でアクリル板はその名の通り、アクリル樹脂という材料をシート状にしたものです。
アクリル樹脂とは
アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体の合成樹脂
これらの素材は呼び名が異なるというわけではなく、そもそも種類が異なりますので、ご注意ください。
では具体的にこの二種類の材料には、どのような差があるのでしょうか。
そもそもプラスチックは結晶性樹脂と非結晶性樹脂に大きく分類され、それぞれの種類によって性質が異なります。
ポリプロピレンは結晶性樹脂、アクリルは非結晶性樹脂です。
- 結晶性樹脂とは
分子が規則的に並んだ部分(結晶部分)があるもの
透明性が低く、耐薬品性には強いという性質を持つ - 非結晶性樹脂とは
分子が不規則に重なったまま固まったものを指す
透明性が高く、耐薬品性には劣るという性質を持つ
これは大まかなくくりでの性質の特徴ですが、その材料であるからこその特徴や性質もあります。
ここからは、材料それぞれに分けて性質を解説します。
もしプラスチックの部品加工やユニットなどの製作をお考えで、材料選定にお悩みの方は、樹脂加工業者「岸本工業」にご相談ください。
当社は、用途や加工内容にあわせて最適な材料を選定いたします。
PPシートの特徴
特徴は、軽量で機能性が高いことです。
また結晶性樹脂でありながらも、透明性が高く光沢があります。
着色無しの場合、白半透明の製品の流通が多いですが、業者によってはよりクリアな製品も販売されています。
また、ポリプロピレンに染料を混ぜ込むことで鮮やかな色合いを出すことができます。
ただし、染料を表面に塗布する場合は剥がれやすいため注意が必要です。
その性質から汎用性が高いため、日常生活だけでなく理化学分野でも使用されています。
では具体的にどのような性質があり、どういった用途で使用されるのか、素材の比較をご紹介します。
PPシートの性質
材料の特性としては強度が高く、耐熱性・耐薬品性に優れた性質を持っています。
耐熱性・耐薬品性があるという点はアクリルとの大きな違いでもあります。
また吸水性が非常に低いため、水への耐性が高いところも特徴の一つです。
先ほど理化学分野でも使用されるとご説明しましたが、それはこれらの性質に優れているからです。
- 強度・・・引張強さは31~41で、強度が高いといわれる高密度ポリエチレンよりも優れた強度を持つ
- 耐熱性・・・耐熱温度は121~160度で、樹脂の中でも高い耐熱性を持つ
- 吸水性・・・吸水率が約0.01%と低く、水(湿度)の影響を受けにくい
- 耐薬品性・・・薬品の種類にもよるが、亜硫酸・塩酸・硝酸・硫酸・りん酸など危険性の高い薬品への耐性もある
ちなみに、過去には硫酸をペットボトルに入れ替えたことで穴が空き、中が漏れ出すという事故がありました。
これは、ペットボトルに使用されている材料、PETが硫酸に耐性がなかったからです。
このように、同じプラスチックでも耐性があるかないかで使用できるものや環境が異なります。
PPシートの用途
優れた性質を持つことから、幅広い用途で使用されます。
ただし紫外線や低温には弱く、劣化しやすくなるため、屋外で使用されることはほとんどありません。
■主な用途
- 看板・パネル(室内使用)
- POP
- トレー
- 薬品・実験用容器
- 科学機器部品
- ケース
- 生活雑貨
ポリプロピレンには印刷が可能ですので、室内で使用するちょっとしたパネルやPOPなどに使用されることがあります。
また強度や耐熱性があり、軽量であることから食品トレーとしても使用されます。
アクリルとの大きな差は、理化学分野に使用されるか否かです。
用途によりますが、耐薬品性に優れていないので、試薬容器などの材料に選ばれることはほどんどありません。
これら材料を使用した機器(ユニット)の製作や部品加工をご検討中の方は、岸本工業へご相談ください。
また販売も行っており、高精度・高品質の材料支給が可能です。
厚み・サイズ
加工性が高く、薄く仕上げることができますので、厚さはおおよそ1mm〜対応している業者が多いです。
薄いものは、頑丈で軽さが求められるクリアファイルや書類ケースなどに使用されます。
一方で、ある程度厚みがあるものはパネルや部品などに使用されます。
岸本工業でも、フルフラット加工により1mm~100mmの間で厚さの指定が可能です。※素材により変動します。
サイズは、2面フライスが最大350mm×1200mm、6面フライスが最大350mm×1000mmまでに対応しています。
アクリル板の特徴
大きな特徴は高い硬度と透明度です。
一般的には透明の無垢材が流通しています。
着色も可能で、不透明なカラーはもちろんのこと、透明度を保ったまま着色することもできます。
当社は、切削加工により無垢材の透明度を調整することが可能です。
用途にあわせて、半透明からガラスレベルのクリアな状態まで調整します。
またポリプロピレンとは異なり耐候性に優れていることから、屋外で使用されることも多いです。
では具体的にどのような性質があり、どういった用途で使用されるのか、またPPとの比較も詳しく解説します。
アクリル板の性質
性質としては、高い硬度や透明度を持ち、耐候性に優れた性質です。
- 硬度・・・表面硬度は2Hほどで、表面処理により硬度を上げることができる
- 透明度・・・光線透過率は厚み3mmでおよそ93%と、プラスチックの中で最も透明度が高い
- 耐候性・・・紫外線や雨風など環境変化に強く、変色・劣化しにくい
こういった性質を持つことから、屋外でも使用されることが多いのです。
ポリプロピレンは紫外線に弱く屋外向きではありませんが、アクリルは紫外線にも耐えることができます。
そういった点での大きな性質の差があります。
アクリル板の用途
その性質を活かした用途で使用されることが多いです。
ただポリプロピレンとは違い耐熱性が低いため、調理器具など高温になる場所で使用される製品には向きません。
■主な用途
- 看板・案内パネル
- 実験器具
- 水槽
- ディスプレイ・ケース
- 飛沫防止パネル
一番身近な用途としては飛沫防止パネルでしょう。
ガラスと同程度の透明度があるので、使用することで、パネル越しに相手の表情をクリアに見ることができます。
他にも流動を確認するための実験器具に、透明度の高いアクリルが選ばれます。
また、印刷が可能ですので、屋外用の看板やパネルとしても使用できます。
厚み・サイズ
ガラスに比べると軽く加工しやすいため、製作物によっては20mm以上の分厚い板が使用されることもあります。
ただ重さがあるため、厚みが増すごとに重くはなってきます。
当社では、厚さ1mm〜100mmの範囲で指定して加工することが可能です。※素材により変動する場合もあります。
対応サイズも同様に最大350mm×1200mmまで対応しておりますので、用途に合わせてオーダーしやすい仕様となっております。
高精度で仕上げますので、平行度・平面度を必要とする水平台などにも使用できます。
材料についてお気軽にご相談ください
材料の特性の差について解説しました。
まとめると、
- アクリルは耐候性があるものの耐熱性や耐薬品性は低い
- ポリプロピレンは耐熱性や耐薬品性はあるものの耐候性が低い
という特徴がありました。
主に性質に大きな差があることが分かります。
そのためどちらかを選ぶときは、材料の特性を知り、その性質にあった用途であるかを確認するのも判断基準の一つです。
比べてみても材料の選定が難しい場合はお気軽に当社へご相談ください。
図面などがない状態でも、どういったものをお作りしたいかヒアリングし、材料を選定致します。
【お問合せ窓口】
電話 03-5703-8171
FAX 03-5703-8173
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