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MCナイロンとジュラコン(POM)の違いとは?特徴や用途をご紹介

MCナイロンとジュラコン(POM)の特徴や違いを解説!

これらの素材はどちらもエンジニアリングプラスチックの一種です。

どちらも似ていますが、実はこのふたつのプラスチックには特性に違いがあります。

プラスチック素材の選定で悩むとき、「いつも使っている材質だから」とついつい慣れている素材を選んでしまいませんか?

ですが、プラスチック部品の多くは劣化や消耗するもの。

使用用途や環境などによって素材の使い分け、部品寿命を延ばしてみてはいかがでしょうか。

今回はそれぞれの材質の特徴や用途、違いについてご紹介します。

 

MCナイロンとは

この素材はエンジニアリングプラスチックの1種で、切削加工用の樹脂です。

(三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社の商標登録名称で、一般的な名称はモノマーキャストナイロンです。)

6ナイロンよりも性能が高いナイロンで、幅広い用途で使われています。

ここでは、素材の特徴(特性)やメリットやデメリット(注意したい点)、主な使用用途についてご紹介します。

 

【特徴】6ナイロンよりも高い性能を持つ樹脂

この素材はポリアミド樹脂でできているナイロンで、工業用途で使われることが多い材料です。

6ナイロンと主原料は同じであるため似た性質を持っていますが、強度において高い性能があります。

一般的に多く使われているのは、青色の樹脂が特徴の基本グレード「MC901」です。

この青色のナイロン樹脂を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

MC901は工業の様々な用途で使われており、機械的強度、耐摩耗性に優れ、最も汎用的に使われるエンプラです。

(基本グレードはMC901の他にもMC900NC(白色)もありますが、色だけ異なり物性に違いはありません。)

このMC901を基本とし、耐候性や摺動性、導電性などの機能を強化した様々なグレードがあります。

 

メリット・デメリット

大きなメリットは機械的強度と耐摩耗性の高さです。

メリット ・機械的強度、耐熱性、耐摩耗性に優れている
・衝撃に強い
・自己潤滑性があるため、金属との摩擦が少ない
・グレード品の種類が豊富で、用途によって使い分けることができる
・プレート・丸棒・パイプ・ローラー材などのサイズ展開が豊富
デメリット ・吸水性が高いため、寸法精度が低い
・耐薬品性があるが、一部の酸には弱い
・形状によっては歪み・反りが発生する場合がある
・素材自体にやや粘りがあり、加工時にバリが出やすい

サイズの設計において自由度が高いのも特徴であり、メリットのひとつです。

一方、非対称の形状を加工する場合、歪みや反りが発生する可能性も高いという点もデメリットとしてあります。

また素材自体にやや粘りがあるため、微小な部品の場合はバリがとりづらい場合があります。

形状によって、注意が必要な素材ともいえるでしょう。

 

MCナイロンの主な用途

最も汎用的な材質であるMC901(MC901NC)の主な使用用途をご紹介します。

使用用途 車輪、ギヤ(歯車)、スプロケット、ローラー、軸受け、スライドプレート、ガイド、絶縁材 など

工業や車両などの分野で広く使われることが多い素材で、一般ではキャスターの車輪やケーブルのシーブなどで使用されています。

 

ジュラコンとは

この素材はPOMの一種で、ポリプラスチックス株式会社の商標登録名称です。

POMはポリアセタール(またはポリオキシメチレン)の略称で、他にもデルリンやポムなどの名称で呼ばれます。

POMには、分子構造の違いによりコポリマー・ホモポリマーの2種類が存在しており、ジュラコンはコポリマーに分類されます。

昨今機械加工用材料として流通しているPOMはほとんどがコポリマーです。

当社へPOMの加工をご用命いただく場合はコポリマーを使用しています。

ここでは、素材の特徴やメリット、デメリット、そして主な用途についてご紹介します。

 

【特徴】機械要素部品を中心に使われているプラスチック

高強度・耐摩耗性・耐疲労性・寸法安定性に優れ、切削性が良い特徴があります。

そのため、POMは軸受けなどの機械要素部品を中心に幅広く使用されています。

また各種機能を強化させたグレード品がありますので、用途に応じて選ぶことができます。

 

メリット・デメリット

汎用的に使用されるプラスチックですが、メリットとデメリットがあります。

メリット ・耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性などの物性、コスト、切削加工性に優れている
・吸水性が小さいため、寸法安定性に優れている
・シート・プレート・丸棒のサイズ展開が豊富
・シートは打ち抜き加工が可能
デメリット ・耐候性に弱く、屋外での使用は適さない
・接着性が悪い
・燃えやすい。燃やすとホルマリンの悪臭がする

寸法安定性に優れているため、はめあい公差が必要なケースなどに強みを発揮します。

従来は白・黒といった色が主流でしたが、最近は生産品種を識別しやすくするため 青・赤・黄色・緑色などのカラーグレードも登場しました。

また基本グレードではMCナイロンに劣る機械的強度も、ガラス繊維を添加して強度を高めたグレードも発売されています。
他にも摺動性を高めたり、帯電防止性能を付加したグレードも発売されています。

目的や用途によって幅広く使用できる素材という点もメリットであり、大きな特徴と言えます。

一方、デメリットとしては屋外での使用には適していないことと、接着性が悪い点が挙げられます。

 

ジュラコンの主な用途

代表的な用途をご紹介します。

使用用途 スイッチ、自動車部品(燃料ポンプ 他)、ファスナー、軸受、ワッシャー
摺動部材料、機械部品、シート、パイプ、楽器のパーツ、食品製造機械部品、医療機器用部品など

機械要素部品の素材として優秀な素材ですが機械分野だけでなく、
食品衛生法に適合しているため食品製造機械・医療機器用部品としても多く使われています。

切削部品以外にも、射出成形で作られている部品としては
リコーダーやホイッスル、ギターのピック、金管楽器などの楽器や、文具、ブラシの柄などの日用品にも使用されています。

工業用から日用品まで幅広い分野で採用されている汎用性も特徴のひとつといえるでしょう。

 

岸本工業では材料選定が可能です!まずはご連絡ください

 

MCナイロンとジュラコン(POM)の違いについて

素材の違いについてご紹介します。

このふたつはどちらもよく使われる材質ですが、比べてみると違いがあります。

材質を選定するときにご参考にしてください。

比較表

MCナイロン(基本グレード) 素材 POM(基本グレード)
6.0 吸水率
(23℃水中飽和値)
0.7
1.16 比重 1.41
120℃ 連続使用温度 110℃
コスト
高強度・耐熱グレード
摺動グレード
耐候グレード
帯電防止/導電グレード
特殊グレード展開 低歪みグレード
摺動グレード
導電グレード
ガラス繊維強化グレード
カラーグレード

比較してみると、上記のような違いが挙げられます。

大きな違いとして「吸水率」や「比重」、そしてグレードやコストの違いを詳しくご紹介しましょう。

 

吸水率

一つ目の大きな違いは「吸水率」です。

MCナイロンは吸水性が高く、POMは吸水性が低い特性があります。

湿度の高い夏と乾燥した冬とで比較すると、MCナイロンは水分による寸法精度の変化が生じやすく、
POMに比べて寸法安定性に劣ります。

したがって、部品使用時の環境によって若干の寸法誤差が生まれることに注意が必要です。

温度・湿度の変化が激しい環境で使用する部品や、水を使用する環境で使用する部品はPOMを選択したほうがよいでしょう。

 

比重

二つ目の違いは「比重」です。

比較表で比べると、POMは比重が重いといえます。

ある程度の耐摩耗性を保持した上で軽量を求めるのであれば、比重の軽い素材を選定するといいでしょう。

 

グレード展開とコストの比較

POMはそのグレード展開から見ても寸法変化・形状変化を低減したい(より歪みや反りを抑えたい)産業機器部品に向いています。

特にトレイ・パレットなど平坦さを必要とする加工品は低歪みグレードの使用が有効ですね。

なお、のコスト比較については

若干ですがPOMの方がコストパフォーマンスに優れています。

ただしサイズや歩留まりによってはこの限りではありませんので、あくまで参考としてください。

 

岸本工業では材料選定が可能です!まずはご連絡ください

 

用途で選ぶのがおすすめ!材質選定のポイント

材質選定のポイントについてご紹介します。

これまでご紹介した通り、材質によって特徴があるため、用途で選定することをおすすめします。

一般的には
・MCナイロンは機械的強度を必要とする加工品
・POMは寸法安定性を求める加工品  に向いています。

ですが、使用環境や形状・相手方の部品とのはめあいなどによっては、一概にどちらがいいと言えない場合があります。

「どっちを選べば良いかわからない」

そんな時は当社から最適な樹脂をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

樹脂製治具の材質選定に関する記事はこちら

用途にあわせて最適な材質で加工を承ります

今回は、一般的に良く使われる素材それぞれの特性や違い、材質選定のポイントについてご紹介しました。

岸本工業ではこのほかにスーパーエンプラ・プラスチック複合材料などの高機能材料の加工実績も数多くあります。

材料選定、寸法精度の設定、構造・機構のご相談、加工方法のご相談など、構想段階からさまざまなモノづくりのお困りごと・ご相談を承っております。

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