1. /
  2. 岸本工業のブログ
  3. /
  4. MCナイロン(モノマーキャストナイロン)の加工ポイントと岸本工業の加工事例をご紹介します

MCナイロン(モノマーキャストナイロン)の加工ポイントと岸本工業の加工事例をご紹介します

MCナイロンとは

ナイロンといえば

ポリアミドの一種であるナイロンは、米デュポン社の商標製品であり、「蜘蛛の糸より細く、絹よりも美しく、鋼鉄よりも強い」というキャッチフレーズで、女性用ストッキングとして使われ始めました。

強靭性が高く、衣料品から工業用品といったさまざまな用途での利用が期待され、現在ではナイロン6、ナイロン66といった、多様な種類のナイロンが私たちの生活に幅広く使用されています。

MCナイロンの特徴

今回取り上げるのは、MCナイロンです。

MCナイロンは上述のナイロン6と化学構造が類似していますが、製造方法に違いがあり、性能も異なります。

MCナイロンはナイロン6の特徴である、摺動性・耐熱性・耐摩耗性を維持しつつ、特に機械的強度を強化した、実用性が非常に高いエンジニアリングプラスチックです。

したがって、MCナイロンは機械的強度の高さから、金属の代替として工業機械部品などに多く使用されます。

例えば、MCナイロンは摺動性の高さ(滑らかさ)から、樹脂製のギア部品を使用する際には多く取り入れられています。

また、加工のしやすさから、ネジ切り部品(ネジを取り付けるための溝をつくる)にも適しており、さまざまな工業製品の部品として加工されています。

詳しくは、こちらの記事「MCナイロンをネジ加工!素材の特徴やメリットをご紹介」をご参照ください。

💡技術者のマメ知識~金属部品の代替

MCナイロンといえば、機械装置と組み合わせた鮮やかな青色の歯車やギアを思い浮かべる人も多いと思います。

なぜ、金属部品と樹脂素材であるMCナイロンを組み合わせるかというと、MCナイロンは自己潤滑性に優れており耐摩耗性が高く、金属部品との摩擦部分のダメージを抑えることができるからです。

金属同士を組み合わせた場合、サビや摩擦によりダメージが蓄積し、亀裂やひび割れといった金属疲労で破断してしまうことがあります。

そのため、サビや摩擦によるダメージの蓄積が多い場所は、定期交換を前提にしてMCナイロンを使用しているのです。

MCナイロンの樹脂加工における注意点

摩擦熱による変形

MCナイロンの実用性の高さは理解いただけたかと思いますが、適切な加工を行わないと、MCナイロンの素材としての価値を十分に発揮できず、品質に影響する可能性があります。

例えば、MCナイロンは熱に敏感なため、加工時の熱による変形を防ぐ目的で冷却液を使用するケースや、切削加工時に発生する熱を調整するために、適切な切削速度や送り速度を設定する等の工夫が必要になります。

これが樹脂加工において難しい点です。

適切な切削工具の選択

樹脂素材の切削加工では、素材の硬度や形状に合わせた適切な切削工具を選択する必要があります。

MCナイロンの硬度(ロックウェル硬さ)は120であり、樹脂素材の中では比較的硬い素材であるため、硬くて鋭い工具の選択が非常に重要です。

硬くて鋭い工具を用いることで、切削時の発熱を抑え、材料の溶着や加工精度の低下を防ぎます。

このため、加工品の歩留まりの高さや精度品質を求める場合は、MCナイロンの樹脂加工の実績が豊富にあり、利用用途に合わせて柔軟に対応ができる業者に依頼することが重要になってきます。

加工後のバリ発生

MCナイロンは柔らかく粘り気がある素材であるがゆえに、旋盤加工時に切り子(切りくず)がつながりやすく、ワークに巻き付くことがしばしばあります。

このため、加工後にバリが発生し、MCナイロン特有の摺動性が損なわれることがあります。

通常、仕上げには機械加工による面取りや、カッターを用いた手作業でバリを削ることで、表面の滑らかさを実現します。

岸本工業では、高精度板厚加工技術(フルフラット加工)を用いて素材を均一な厚みにしたうえで、旋盤加工を行うことも可能であるため、MCナイロン素材本来の摺動性を最大限に活かすことができます。

また、用途によりますが、潤滑剤が配合されたMCナイロンを採用することで、ろうそくのような手触りを実現することも可能です。

💡技術屋のマメ知識②:MCナイロン加工時の溶着

テーパー状のMCナイロンを旋盤加工する場合、回転するワークが振れないように固定するために、芯押しを行います。

その際、ワークがかじる(*)ことで、熱が発生して素材が溶着することがあります。

場合によっては作り直しになることもあるので、岸本工業では加工方法や手順、切削工具などを変えるなど細心の注意を払って加工しています。

(*)「かじる」とは、加工中に切削工具がワークに深く食い込み、工具とワーク間の接触圧力が高まる現象を指します。

MCナイロン加工事例

事例概要

「できる限り丈夫で軽く、ほこりが付着しづらい樹脂ローラーを作ってほしい。ローラーは回転するため、表面の滑りが良い樹脂を使用したい。」

本事例では、機械的強度摺動性の観点から、MCナイロンを採用しました。

なお、MCナイロンとよく比較される素材にジュラコン(POM)があります。

詳しくは、こちらの記事「MCナイロンとジュラコン(POM)の違いとは?特徴や用途をご紹介」をご参照ください。

設計工程

お客様の要望に応じて、耐久性と摺動性を兼ね備えたMCナイロン製のローラーの設計図を作成しました。

量産化を見据えたうえで、素材やリソースを最大限に活用して、設計図に落とし込みました。

加工工程(旋盤加工)

はじめに、MCナイロンのブロックから基本形状を削り出しました。この工程では、CNC旋盤を用いて大まかな外形を形成し、穴あけ加工でワークに貫通穴をあけました。

その後、内径加工により、内径のサイズを調整しながら、必要な公差や表面仕上げを調整しました。

次の工程でも同様に、旋盤加工によりMCナイロンのローラーの回転面の表面を滑らかに仕上げました。

ローラーの回転性能を最適化するため、表面処理として研磨を行い、MCナイロン本来の機能を最大限に活かしたローラーが完成しました。

まとめ

今回は、MCナイロンの樹脂加工事例についてご紹介しました。

MCナイロンは、機械的強度摺動性が非常に高いことから、機構部品の素材として広く使用されています。

一方で、MCナイロンは吸水性が高く、寸法精度を出しづらいという特徴もありますので、用途に応じた適切な特徴を持つ素材を選定する必要があります。

岸本工業では、樹脂素材の選定から設計、そして加工までを一気通貫でサポートいたします。お気軽にご相談ください。

【お問い合わせ先】
電話 03-5703-8171
FAX 03-5703-8173
お問合せフォーム