1. /
  2. 岸本工業のブログ
  3. /
  4. アクリルとポリカーボネートの違い| 切削加工時の注意点と選び方を解説

アクリルとポリカーボネートの違い| 切削加工時の注意点と選び方を解説

アクリルとポリカーボネートは、どちらも透明部品やカバーに使われる代表的な樹脂素材です。

見た目はよく似ていますが、透明性、耐衝撃性、耐熱性、傷付きやすさなどの特性には違いがあります。

そのため、単に「透明な樹脂」という理由だけで選ぶと、使用中の割れや傷、加工後の反り、仕上がりの不具合などが問題になることがあります。

特に切削部品では、素材そのものの性能だけでなく、部品形状や要求精度まで含めた選定が必要です。

本記事では、アクリルとポリカーボネートの基本的な違いを比較したうえで、切削加工時の注意点や加工後の仕上がり、切削部品に適した材料の選び方を解説します。

アクリルとポリカーボネートの違い

アクリルとポリカーボネートは、どちらも透明性を持つ熱可塑性樹脂です。

ガラスより軽く、切削や穴あけなどの加工ができるため、透明カバーや装置部品、建材など、幅広い用途に使われています。

透明な板材の状態では外観がよく似ていますが、得意とする性能は異なります。

一般的には、透明性や外観を重視する場合はアクリル、耐衝撃性や安全性を重視する場合はポリカーボネートが候補になります。

アクリルとは

アクリルは、アクリル樹脂またはPMMAと呼ばれる透明樹脂です。

高い透明性と光沢のある外観を持ち、ガラスの代替材としても広く利用されています。

展示ケースや看板のほか、内部を確認するための可視化用パイプ、透明カバー、実験装置部品など、視認性や見た目の美しさが求められる用途に使われます。

一方、強い衝撃や局所的な応力が加わると、割れや欠け、クラックが生じることがあります。そのため、衝撃が加わりにくく、透明感や仕上がりを優先したい部品に適した素材です。

ポリカーボネートとは

ポリカーボネート(PC)は透明性を持ちながら、高い耐衝撃性を備えていることが大きな特徴です。

カーポート屋根や機械の保護カバー、安全窓など、人や物が接触する可能性がある場所や、破損による危険を抑えたい用途に使われます。

また、アクリルより耐熱性に優れているため、比較的温度が高くなる環境でも採用されます。

一方、表面はアクリルより傷が付きやすい傾向があります。また、薬品に触れる場合は注意が必要で、薬品の種類や使用条件によってクラック(ひび割れ)が生じることがあります。

そのため、外観よりも割れにくさや安全性を優先したい場合に適した素材です。

アクリルとポリカーボネート

 

アクリルとポリカーボネートの特性を比較

上述の通り、アクリルは透明性や光沢、耐候性に優れ、外観や視認性を重視する用途に向いています。

一方、ポリカーボネートは透明性、耐衝撃性や耐熱性に優れ、割れにくさや安全性が求められる用途に適しています。

また、表面の傷付きやすさ、薬品への耐性、加工時の挙動などにも違いがあります。

そのため、どちらが優れているかではなく、使用環境や必要な性能に応じて選ぶことが重要です。

アクリルとポリカーボネートの主な違いを、以下の表に整理します。

【凡例】
◎:特に優れている
〇:一般的な用途で十分な性能を持つ
△:使用条件やグレードへの配慮が必要

特性 アクリルの特徴 ポリカーボネートの特徴
透明性 ◎ ・光の透過性が高い・光沢があり、透明感を出しやすい
・外観や視認性を重視する用途に適する
〇 ・内部を確認できる透明性を持つ
・アクリルと比べると、透明感や光沢はやや劣る
耐衝撃性 △ ・ガラスより割れにくい
・強い衝撃では割れや欠けが生じることがある
・衝撃や荷重が加わる用途では注意が必要
◎ ・透明樹脂の中でも耐衝撃性が高い
・強い衝撃を受けても割れにくい
・保護カバーや安全窓に適する
傷への強さ 〇 ・ポリカーボネートより表面が硬い
・比較的傷が付きにくい
・擦れが多い環境では細かな傷に注意が必要
△ ・表面が比較的柔らかく、擦り傷が付きやすい
・外観を重視する場合は表面硬化グレードも検討する
耐熱性 △ ・常温付近での使用に適する・高温では軟化や変形に注意が必要
・熱が継続的にかかる用途には向きにくい
◎ ・アクリルより高温環境に対応しやすい
・熱がかかるカバーや部品にも使用される
・使用可能温度はグレードや荷重によって異なる
耐候性 ◎ ・紫外線による黄変や劣化が比較的少ない
・屋外でも透明性を維持しやすい
・看板や屋外カバーにも使用される
〇 ・屋外用途にも使用できる
・一般グレードは紫外線による黄変に注意が必要
・長期間使用する場合は耐候グレードが適する
耐薬品性 〇 ・酸やアルカリなどに比較的耐えやすい
・アルコールや有機溶剤によって、白化やクラックが生じることがある
△ ・薬品の種類によって劣化やクラックが生じることがある
・応力が加わった状態で薬品に触れる場合は特に注意が必要
加工性 〇 ・切断、穴あけ、切削、接着などが可能
・研磨によって加工面の透明度を高めやすい
・割れや欠け、クラックに注意が必要
〇 ・切断、穴あけ、切削、曲げなどが可能
・粘りがあり、衝撃による割れは生じにくい
・切削熱によるバリや変形に注意が必要
価格 ◎ ・一般的にポリカーボネートより安価
・透明板として入手しやすい
・価格はサイズや板厚によって異なる
〇 ・一般的にアクリルより高価
・耐衝撃性や耐熱性が必要な用途では価格に見合う利点がある
・耐候や表面硬化グレードはさらに高価になることがある
アクリルとポリカーボネートの特性比較

 

切削加工におけるアクリルとポリカーボネートの違い

アクリルとポリカーボネートは、板材として使われるだけでなく、切削加工によって穴や溝、段差を設けた部品にも加工されます。

切削部品として使う場合は、素材特性に加えて、加工時の挙動や仕上がりの違いを確認することが重要です。

切削加工時に生じやすい注意点

アクリルは比較的切削しやすく、良好な加工面を得やすい素材です。

一方で、加工時の衝撃や工具の切れ味によっては、割れや欠け、白化、クラックが生じることがあります。

そのため、切れ味のよい工具を使い、衝撃や局所的な発熱を抑えることが重要です。

ポリカーボネートは粘りがあり、アクリルより割れにくい反面、切削熱の影響を受けやすい素材です。

材料が軟化すると、切りくずの付着やバリ、溶着、変形につながるため、切りくずを排出しやすい加工条件の設定と適切な固定が必要です。

切削加工後の仕上がり

アクリルは、切削のみでも比較的滑らかで透明感のある加工面を得やすく、研磨を施すことで、さらに透明度や光沢を高められます。そのため、透明部品や外観を重視する部品に向いています。

ポリカーボネートは、切削面に工具痕やバリが残る場合があり、高い透明度を求める場合は研磨などの仕上げ加工が必要です。

また、アクリルより弾性があるため、切削時や固定時の力によって、たわみや変形が生じることがあります。

寸法精度は、どちらの素材も一律に決まるものではなく、削り方や加工順序、固定方法によって変わります。

アクリルは材料内部の応力や片側からの大きな切削によって反りが生じることがあり、ポリカーボネートは加工熱や固定時の応力、材料のたわみによって変形することがあります。

そのため、高い寸法精度を確保するには、アクリルでは削り量のバランスや加工順序、ポリカーボネートでは発熱や固定による変形を抑えることが重要です。


 

ポリカーボネートの切削方法や加工手順、長所や短所については、「ポリカーボネートの切削加工を徹底解説!樹脂加工は岸本工業へおまかせください」で紹介しています。

切削加工する際のアクリルとポリカーボネートの選び方

アクリルとポリカーボネートは、どちらも切削加工が可能な素材ですが、求められる性能や部品形状によって適した素材は異なります。

使用環境で求められる性能に加え、部品の形状や必要な寸法精度、加工後の仕上がりまで含めて選定することが重要です。

使用環境と必要な性能から選ぶ

透明性や外観を重視する場合は、アクリルが候補です。

加工面を滑らかに仕上げやすく、研磨によって透明感や光沢を高められます。

耐衝撃性や耐熱性を重視する場合は、ポリカーボネートが適しています。機械の保護カバーや、安全性が求められる透明部品に向いています。

耐候性を重視する場合は、屋外でも透明性を維持しやすいアクリルが候補です。

ポリカーボネートを屋外で長期間使用する場合は、耐候グレードを選定します。

また、傷付きにくさも求める場合は、表面硬化グレードを検討します。

薬品に触れる部品では、使用する薬品の種類や温度、接触時間を確認する必要があります。

アクリルとポリカーボネートの適否を確認したうえで、耐薬品性を優先する場合は、塩化ビニルやPMPなどの樹脂も選択肢になります。

アクリルの切削加工例

 

部品形状と要求精度から選ぶ

アクリルは良好な加工面を得やすい一方、穴や角部、薄肉部では割れや欠けに注意が必要です。削り量が大きい場合は、加工後に反りが生じることもあります。

ポリカーボネートは割れにくい反面、弾性があるため、薄肉や細長い形状ではたわみや変形に注意が必要です。

また、切削熱による寸法変化にも配慮します。

高い精度を求める場合は、素材だけでなく、厚み、穴や溝の形状、削り方、固定方法まで含めて判断します。

一般的に、透明感や外観を重視する場合はアクリル、耐衝撃性や割れにくさを重視する場合はポリカーボネートが候補となります。

複雑形状や高精度部品では、図面と使用条件をもとに加工業者へ相談するとよいでしょう。

ポリカーボネートの切削加工例(左:蒸着処理後、右:蒸着処理前)

 

アクリルとポリカーボネートの違いに関するQA

アクリルとポリカーボネートは、どちらが透明ですか?

一般的には、アクリルの方が比較的透明性や光沢に優れています。
内部の見やすさや外観を重視する透明部品には、アクリルが適しています。
ポリカーボネートも十分な透明性を持ちますが、透明感や光沢はアクリルよりやや劣ります。

アクリルとポリカーボネートは、どちらが割れにくいですか?

ポリカーボネートの方が耐衝撃性に優れ、強い衝撃を受けても割れにくい素材です。
機械の保護カバーや安全窓など、破損による危険を抑えたい用途に向いています。
アクリルもガラスより割れにくいものの、強い衝撃や局所的な力によって、割れや欠けが生じることがあります。

表面に傷が付きにくいのはどちらですか?

アクリルの方が表面が硬く、ポリカーボネートより傷が付きにくい傾向があります。
ただし、擦れが多い環境ではアクリルにも細かな傷が付くため、取り扱いには注意が必要です。
ポリカーボネートで外観も重視する場合は、表面硬化グレードが候補になります。

屋外で使用する場合はどちらが適していますか?

屋外で透明性を長期間維持したい場合は、耐候性に優れるアクリルが候補です。
看板や屋外カバーなどにも使用されています。
ポリカーボネートも屋外で使用できますが、一般グレードでは紫外線による黄変や劣化に注意が必要です。
長期間使用する場合は、耐候グレードを選びます。

耐熱性に優れているのはどちらですか?

耐熱性は、ポリカーボネートの方が優れています。一般的な目安として、アクリルの連続使用温度は80℃以下、ポリカーボネートは120℃以下です。
そのため、常温付近で使用する透明部品にはアクリル、発熱する装置の周辺など、より高い温度で使用する部品にはポリカーボネートが適しています。
ただし、実際の使用可能温度は、材料のグレード、荷重、板厚、使用時間などによって異なりますので、温度条件だけで判断せず、メーカーの仕様を確認することが重要です。

切削加工しやすいのはどちらですか?

どちらも切削加工できますが、加工時の特徴が異なります。
アクリルは比較的切削しやすく、滑らかな加工面を得やすい一方、割れや欠け、クラックに注意が必要です。
ポリカーボネートは割れにくい反面、切削熱によるバリや溶着、たわみ、変形への配慮が求められます。

透明な切削部品には、どちらを選べばよいですか?

透明感や加工面の美しさを重視する場合はアクリル、耐衝撃性や割れにくさを重視する場合はポリカーボネートが候補です。
ただし、実際の選定では、使用温度や衝撃の有無だけでなく、部品の厚み、穴や溝の形状、要求精度まで含めて判断する必要があります。

薬品に触れる部品にも使用できますか?

どちらも使用する薬品の種類や温度、接触時間によって、白化やクラックが生じる場合があります。
そのため、使用予定の薬品に対する耐性を事前に確認することが重要です。
耐薬品性を優先する場合は、塩化ビニルやPMPなど、ほかの樹脂も選択肢になります。

アクリル・ポリカーボネートの切削加工は岸本工業へ

アクリルとポリカーボネートの違いを理解することで、求める透明性や耐衝撃性、部品形状、寸法精度によって適した素材を選択できます。

切削加工では、素材特性に合わせて工具や加工順序を調整し、割れや変形を抑えることが重要です。

岸本工業では、アクリル・ポリカーボネートをはじめとする樹脂の切削加工に対応しています。

材料選定から加工方法まで検討しますので、透明部品や高精度部品の製作でお困りの際はご相談ください。

【お問い合わせ先】
電話 03-5703-8171
FAX 03-5703-8173
お問合せフォーム