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樹脂の精密加工を検討する前に|手戻りを防ぐための判断ポイント

樹脂加工における精密さとは

樹脂の精密加工とは、一般的な樹脂加工と比べて、より高い寸法精度や再現性が求められる加工を指します。

樹脂部品の中には、組付けや位置決め、嵌合など、寸法のばらつきがそのまま機能や品質に影響するものがあります。

こうした場合、通常の樹脂加工よりも高い精度が求められます。

本記事では、精度要求が高い樹脂部品について、精密加工が検討される場面と、検討時に押さえておきたいポイントを整理します。

樹脂の精密加工

 

樹脂の精密加工が求められる場面

樹脂の精密加工は、精度要求や設計条件、製品用途の変化を背景に、特定の場面で検討される加工手段です。

ここでは、代表的な3つの場面を紹介します。

一般的な樹脂加工では精度が足りない場合

樹脂部品の量産では、射出成形をはじめとした成形加工が一般的です。

成形加工における加工精度は金型の精度に大きく依存し、寸法や形状は基本的に金型で決まります。

また、成形加工では金型の製作後にゲート位置の制約やゲート処理が必要になるほか、狙った寸法に合わせるためには金型の修正が必要になる場合もあります。

これらの調整は多くが手作業となるため、工数やコストの負担が大きくなりやすく、寸法精度や再現性に影響することもあります。

そのため、試作や少量生産など金型製作ではコストが見合わない場合や、高精度の量産加工を行う場合には、成形加工ではなく切削による樹脂の精密加工が検討されます。

金属部品を樹脂に代替する場合

製品要求や使用環境の変化を背景に、従来は金属で作られていた部品を、樹脂に置き換えることがあります。具体的には、軽量化やコストの見直し、調達性やリードタイムの問題、さらには部品数の削減や構造の簡素化といった理由から、樹脂化が検討されるケースです。

金属部品を樹脂に置き換えた場合でも、位置決めや嵌合といった機能は金属と同等の精度が求められるため、単に形状を置き換えるだけでなく、機能を成立させるために必要な寸法精度や再現性を確保したうえで樹脂化を進める必要があります。

こうした要件に対応するため、切削による樹脂の精密加工が用いられます。

※金属部品の樹脂代替については「金属部品の樹脂代替を検討中の方へ~岸本工業では素材選定からサポートします」を参照ください。

位置決め用クランプの樹脂化

 

精度に加えて樹脂特有の特性を活かしたい場合

樹脂の精密加工は、精度要求だけで選ばれるものではありません。

用途によっては、絶縁性や耐腐食性、防錆性や軽量性といった樹脂特有の特性が、機能や使い勝手に直結することがあります。

こうした場合、樹脂材料の特性を活かしながら、精度も同時に確保する必要があります。

防錆性樹脂の位置決め治具

 

樹脂の精密加工が難しい理由

樹脂の精密加工には、設計内容、材料特性、加工条件が相互に影響するため、加工精度を高めるためには総合的な検討が必要になります。

材料特性による影響

樹脂材料は種類によって特性が大きく異なり、寸法変化も一様ではありません。

また、材料を成形・固化する過程で内部に応力が残ることがあり、切削加工によってその応力が解放されることで、加工後にわずかな変形が生じる場合があります。

たとえば、ガラス繊維を含むPPSなどの材料では、剛性が高い一方で、繊維配向や内部応力の影響を受けやすいといった特性があります。

さらに、樹脂は金属と比べて熱膨張係数が大きいため、加工時や使用環境の温度によって寸法が変化してしまう点にも注意が必要です。

設計上の難しさ

樹脂部品の設計では、金属部品を前提とした寸法公差がそのまま求められるケースがあります。

しかし、金属と比較すると樹脂は材料特性の影響を受けやすく、同等の厳しい公差(1000分台)を安定して維持することは難しいのが実情です。

これは加工技術のみによるものではなく、温度変化や吸湿による寸法変化といった樹脂特有の性質の影響を受けるためです。

そのため、樹脂精密加工では、用途や機能を踏まえたうえで、樹脂で現実的に成立する寸法公差へ調整する設計判断が求められます。

加工・治具による対応の難しさ

樹脂の精密加工では、加工中の変形を抑えることも重要な課題になります。

切削時の保持方法や治具の使い方によって、加工中にたわみや変形が生じ、狙った精度が得られないことがあります。

そのため、加工順序の工夫や変形を抑える治具の活用といった加工条件の最適化が不可欠です。

樹脂精密加工の成否を左右する要素

樹脂の精密加工では、精度を出すための考え方そのものが重要になります。

設計と加工のどちらか一方ではなく、両面から条件を整理できているかどうかが成否を分けるポイントになります。

設計

樹脂の精密加工では、製品全体に一律の厳しい公差を求めるのではなく、どこに精度が必要で、どこは許容できるのかの見極めが重要です。

金属部品を前提とした設計のままでは、樹脂材料の特性と合わず、加工上の負荷や変形リスクが高まるケースもあります。

機能に直結する寸法や樹脂で成立できる公差設定が設計段階で考慮されているかどうかが、樹脂の精密加工の成否を分けるポイントになります。

加工技術

実現性のある設計ができていても、それを実際の形状として再現できる加工技術が伴わなければ、狙った精度は得られません。

樹脂の精密加工では、次のような要素が、精度や再現性に影響します。

  • 加工順序や基準面の設定
  • 加工治具や保持方法の工夫
  • 材料特性を踏まえた切削条件の選定

設計意図を理解したうえで、加工条件まで含めて組み立てられるかどうかが重要です。

岸本工業の樹脂の精密加工事例

半導体用ICソケット部品

問い合わせの内容

半導体用ICソケット部品について、試作や評価用途を前提とした樹脂部品の製作相談がありました。

要求精度は±0.03で、材料にはユニレートが指定されています。

ICを安定して保持・位置決めする用途のため、反りや変形が少なく、形状を安定して保てること、あわせて絶縁性を確保することが求められていました。

加工・設計上の課題

ICソケット部品では、部品全体の精度というよりも、一部の寸法や位置関係が機能に直結します。

一方で、金属部品と同じ感覚で厳しい公差を設定すると、樹脂材料の特性上、加工や検査の負担が大きくなってしまいます。

また、ユニレートは比較的精度を出しやすい材料ではあるものの、形状や加工順によっては変形の影響を受けやすく、設計内容と加工方法の整理が必要でした。

対応のポイント

精度が必要な箇所を厳選し、全体に過剰な公差をかけない設計条件としました。

加工面では、6面フライス加工とし、二次加工で精度を作り込む工程を採用しました。

樹脂材料として現実的に成立する精度範囲で条件を組み立てることで、機能と精度を両立した仕上がりを実現しました。


 

測定機器搭載部品

問い合わせの内容

測定機器に搭載する樹脂部品について、追加製作の相談がありました。

要求精度は±0.02で、材料はPEEK、数量は1品ものの少量対応です。

測定精度への影響を抑えるため、温度変化がある環境下でも寸法変化を抑えたいという要件がありました。

加工・設計上の課題

測定機器用途では、精度に加えて環境変化に対する安定性が重要になります。

PEEKは比較的精度を出しやすい材料ですが、細穴や溝形状では、加工負荷やバリの影響が寸法精度に直結します。

加工条件や工具選定を誤ると、狙った精度が得られないだけでなく、仕上がりのばらつきが生じるリスクがありました。

対応のポイント

材料特性を踏まえ、加工時に過度な負荷がかからない切削条件を設定しました。

あわせて、加工順序や使用工具を工夫し、細部のバリ発生を抑えることで、安定した精度を確保しています。

その結果、精度と環境変化への安定性を両立した状態で、測定機器への搭載が可能な仕上がりを実現しました。


 

樹脂の精密加工は早い段階での整理が重要

樹脂の精密加工では、設計内容や材料特性、使用環境、加工方法といった条件が複合的に関わります。

そのため、検討の初期段階でどこまで条件を整理できているかが、その後の進めやすさや仕上がりに大きく影響します。

たとえば、次のような点は検討の初期で迷いやすいポイントです。

  • 精度要求が樹脂で現実的か
  • 材料選定は用途や環境条件に合っているか
  • 金属部品からの代替が、設計の前提を含めて妥当か

これらは、カタログや一般的な情報だけでは判断しきれない場合があります。

また、加工段階に入ってから条件の見直しが必要になると、設計変更や手戻りが発生し、時間やコストの負担が大きくなる場合もあります。

岸本工業では、加工可否の判断にとどまらず、設計段階での条件整理や材料選定についても相談を受け付けています。

樹脂の精密加工についてお悩みの際は、まずはお気軽に岸本工業までお問い合わせください。

【お問い合わせ先】
電話 03-5703-8171
FAX 03-5703-8173
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