樹脂加工品の製作依頼を検討しているお客様へ
車やバイクのカスタムパーツ、ペット用品、DIYアイデア商品など、日常生活や趣味の中で「こんなものがあったら便利だ」と感じる製品を形にしたいというご相談を、数多くいただきます。
しかし、初めて樹脂加工を依頼されるお客様の中には、「この製品なら、このくらいで作れるだろう」と想定されている予算と、実際の製作工程や費用とのギャップに驚かれるケースも少なくありません。
この記事では、樹脂加工の製品を製作するまでの工程やそれにかかる費用の目安などをご紹介します。
なお、現在は個人のお客様からのお問い合わせは受け付けておりませんので、恐れ入りますがご了承ください。
お問い合わせが多いカスタム製品と量産品
樹脂加工のご相談には、製品の用途や目的に応じて「カスタム製品」と「量産品」の2つの方向性があります。
ここでは、それぞれの特徴や製作プロセスの違いを解説します。
(1)カスタム製品
カスタム製品は、1点ものや特注仕様の製品が対象です。
たとえば、車のヘッドライトカバーやバイクのカスタムパーツ、ペット用品などが挙げられ、特定のニーズに合わせて設計・製作します。
試作や特定用途向けの商品開発などは小ロット生産が主流となるため、初期費用が高額となり、製品当たりの単価が高くなる傾向があります。
(2)量産品
アイデア商品や実験用部品など、多数の製品を安定した品質で量産する場合があります。
数量が少ない場合は簡易金型を用いることもあれば、本格的な金型を使用して1,000個以上の製品を大量生産する場合もあります。
初期投資が高額になりやすいですが、大量生産によって単価を抑えることができます。
カスタム製品の製作事例と費用
カスタム製品は、1点ものや特注仕様といった、特定の目的に合わせて使われるオリジナル製品やパーツが多く、ニーズや条件に応じた柔軟な対応が求められます。
この項では、カスタム製品の具体的な事例を挙げながら、製作の流れと費用について詳しく紹介します。
(1)具体例
製品例
- 製品: バイクの風よけ(ウインドシールド)
- 大きさ: 縦380mm × 横340mm
- 材質: ポリカーボネート
- 数量: 1個
メーカーの販売が終了しているバイクのウインドシールドの製作依頼例です。
当製品はバイクの大きさとデザインに合わせて特注で作成する必要があり、耐久性や透明度が求められる点が特徴です。
このように、一般的な市販品では対応しきれない特殊な形状や機能を実現するための製作工程と費用の目安をご紹介します。
(2)製作工程
方向性のすり合わせ
お客様からのお問い合わせ内容をもとに、製品の形状や用途、必要な加工方法について詳細にヒアリングし、具体的な加工方法や予算をすり合わせていきます。
本事例の「バイクの風よけ(ウインドシールド)」の場合、製品の透明度や曲面の形状が重要な要素となります。
まず、お客様のご要望をもとにどのような材料を使用するか、加工方法は何が適切かを我々から共有します。
一般的には、ポリカーボネート素材を使用し、木型を用いて成形する方法を採用します。
具体的には、バイクの現物を3Dスキャンし、そのデータを基に木型を設計します。
この木型に対して、加熱したポリカーボネート素材を押し当てて成形し、冷却することで製品を完成させます。
木型の製作には高額な初期費用(約40万円~)がかかるため、お客様の予算に合致するかを早い段階で確認します。
なお、この方向性のすり合わせには費用は発生しません。
設計
設計工程では、お客様のイメージや要望を具体的な形状としてデータ化します。
具体的には、バイクの現物をお借りして3Dスキャンを行い、製品の正確な寸法や形状をデータ化します。
これをもとに、ウインドシールドを成形するための木型の設計を行います。
木型の設計では、製品の強度や耐久性、使用する材料の特性を考慮しながら、最適な形状と寸法を決定します。
また、風よけとしての性能を最大限に発揮するために、曲面の滑らかさや透明度を損なわないような設計をします。
お客様が設計図や3D CADデータをすでにお持ちの場合、この工程は省略可能です。
ただし、図面が製品仕様や成形方法に適合しているかどうかを確認し、必要であれば微調整を加える場合があります。
加工
設計した木型を使用してポリカーボネート素材を成形します。
まず、製品の形状に合わせた正確な木型を作ります。
次に、加熱後の柔らかいポリカーボネート素材を木型で挟み込み、冷却することで製品の形状を固定します。
加工内容に応じて、追加の仕上げ作業が必要になる場合があります。
たとえば、製品表面の磨き加工やエッジの処理などが該当します。
これらは製品の見た目や使用感に直結するため、お客様のご要望に応じて対応します。
検査・納品
加工が完了した製品は、検査工程を経てお客様に納品します。
この検査工程では、製品の寸法精度や表面仕上げ、透明度などを厳密に確認します。
検査工程の必要性は製品の用途やお客様の要望によって異なり、精密な検査が不要な場合は省略することも可能です。
検査が終了した製品は、配送中の安全性を考慮して適切に梱包し、お客様に納品します。
納品時には梱包費や配送費が費用に含まれます。
(3)費用
バイクの風よけ(ウインドシールド)の製作費用は、各工程で発生する費用を合計すると約55万円~が目安になります。
3Dスキャンを用いた採寸や設計データ作成に「採寸費・データ作成費」として約10万円~、製品の形状を成形するための「木型製作費」は約40万円~、成形加工や仕上げ作業、必要に応じた検査、梱包費や配送費等を含む「製品製作費」が約5万円~かかります。
量産品の製作事例と費用
量産品は、アイデア商品や研究・実験用の部品など、多数の製品を均一な品質で製作することを目的としたものが対象です。
この項では、量産品の具体的な事例を挙げながら、製作の流れと費用について詳しくご紹介します。
(1)具体例
製品例
- 製品: 生物科学系の実験用部品
- 大きさ: 縦30mm × 横30mm
- 材質: 一般プラスチック
- 数量: 1,000個
- 要件: 試作品作成後に量産希望
量産化を見据えた実験用部品の製作例です。
最初に試作品を作成し、その後に量産工程へ進むため、試作時点での精度確認と量産への適用性の判断が重要になります。
当製品を例として、量産化を見据えたうえでの製作工程と費用の目安をご紹介します。
(2)製作工程
方向性のすり合わせ
方向性のすり合わせの段階では、製品の用途や具体的な形状、求められる精度をお客様と共有します。
たとえば、本事例では「研究用部品としての耐久性」や「製作数量の規模」などが重要なポイントです。
さらに、試作を通じて確認すべき点や、最終的な量産に向けた加工方法(簡易金型の利用など)をお客様と一緒に検討します。
この段階で、試作費用と量産に向けた初期費用の大まかな目安をお伝えします。
なお、方向性のすり合わせの工程自体では費用は発生しません。
設計
設計段階では、試作および量産に向けたデータを作成します。
具体的には、お客様から提供いただいた仕様や寸法をもとに、製品を3Dモデル化し、量産時の加工精度や材料特性を考慮した設計を行います。
お客様がすでに詳細な設計データをお持ちの場合、この工程を省略できることがあります。
試作
製品の形状や寸法、使用感をお客様に確認していただくために、プラスチックの切削加工により試作品を数個製作します。
試作段階では、製品の用途や最終的な要求仕様に基づいて、使用感だけでなく、耐久性や細部の仕上がり具合も評価いただきます。
試作の評価結果によっては、設計データの微調整や追加試作が必要となる場合もあります。
※大きな仕様変更は追加費用がかかる場合があります。
試作品をもとに量産化の実施有無を判断いただき、量産化に進む場合は改めて量産分のお見積りを行います。
量産
試作を終えた設計データをもとに、量産用の金型を製作します。
本事例では、簡易的な金型を利用することで費用を抑えつつ、1,000個の大量生産を実現します。
簡易金型の場合でも、金型の製作費用は数百万円の費用がかかり、製品単価は製作数量に応じて変動します。
一般的には、数千個未満の場合は簡易金型を使い、1個あたり約300円~、1万個以上では本格的な金型を用いて、1個あたり約100円~が相場となります。
検査・納品
量産された製品は、品質基準に基づいて検査を実施します。
寸法や外観の仕上がりを確認し、不良品を排除することで安定した品質を確保します。
検査後は製品を梱包し、お客様のもとに安全にお届けします。
配送時の安全性を考慮した梱包費や配送費は費用に含まれます。
(3)費用
上記の実験用部品の製作費用は、各工程で発生する費用を合計すると約138万円~が目安になります。
設計段階ではお客様からいただいた仕様をもとに3Dデータを作成するための「設計費」が約5万円~、「試作費」が約3万円~、量産用の簡易金型である「金型製作費」が約100万円~必要になります。
この簡易金型を用いることで、1個あたりの加工費は量産規模に応じて抑えられます。
たとえば、1,000個の場合、1個あたりの加工費は約300円~、「製品製作費」として約30万円~かかります。
まとめ
本記事では、樹脂加工におけるカスタム製品と量産品の特徴、製作工程、そして費用の目安をご紹介しました。
はじめて樹脂加工をご検討される方にとって、実際の製作費用とご予算とのギャップに驚かれることが多々あります。
本記事を通じて、樹脂加工の製造工程やそれぞれの費用の目安についてイメージを持っていただく一助となれば幸いです。
【お問い合わせ先】
電話 03-5703-8171
FAX 03-5703-8173
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