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液漏れしない気密性の高い実験器具を作れないか?アクリル製の実験用気密容器の加工事例をご紹介

はじめに

岸本工業では、理化学系の研究分野から、特定の実験で使用する気密容器に関するお問い合わせを頂くことがあります。

特に、「透明性があり、液体がこぼれない気密性の高い実験器具を作成してほしい」という問い合わせが多く寄せられており、アクリル製の実験用気密容器をご提案するケースがあります。

本記事では、樹脂製の実験用気密容器のメリットや、一般的なガラス製実験用気密容器との比較、使用条件に応じた選定基準について解説します。

また、当社の加工技術を生かした具体的な事例もご紹介します。

アクリル製実験用気密容器のメリット

気密容器にアクリル素材を採用する一番の理由はアクリルの持つ透明性の高さです。

ガラスと同等かそれ以上の透明度を持ち、実験中のサンプルを明確に視認することが可能です。

これは、化学反応の観察や精密な測定を必要とする実験にとって非常に重要です。

さらに、アクリルは光透過率が高いため、照明条件下でもサンプルの色や状態を正確に評価することができます。

※アクリルの特徴についてさらに詳しく知りたい方は「樹脂とアクリルの違いを分かりやすく解説!特性や加工方法などもあわせてまとめています」もご参照ください。

ガラス製とアクリル製の違い

物理的特性の比較

ガラスとアクリルは、それぞれ独自の物理的特性を持っており、実験用途によって使い分けて使用することができます。

ガラスは高い耐熱性と透明度を持ち、一方でアクリルは衝撃に強く、軽量であることが大きな特徴です。

耐衝撃性

アクリルはガラスに比べて約50倍の衝撃強度を持ち、落下や外部からの衝撃による破損のリスクが低いです。

重量

アクリルの比重はガラスの比重の約半分であり、特に大型の実験器具や移動が必要な装置に適しています。

耐化学性

ガラスは多くの化学物質に対して耐性を持ちますが、アクリルは有機溶媒に弱い点に注意が必要です。

使用条件による選定基準

実験の条件や目的によって、ガラス製またはアクリル製の実験用気密容器を選ぶ基準が異なります。

コスト

一般的に量産されているガラス製の実験用気密容器は初期コストが低く抑えられます。

一方で、特定の実験に限り利用するための特殊形状といったオーダーメイド品の場合には、加工の容易さを考慮するとアクリルの方が総合的なコストパフォーマンスに優れる場合があります。

耐熱性

高温条件下での使用が前提の実験ではガラス製の方が適しています。

アクリルの耐熱温度は約80℃なので、通常の室温の実験室内であれば、アクリル製を使用しても問題ありません。

耐化学性

ガラス製の実験用気密容器は、一部の薬品を除き、酸や塩基に対して強い耐薬性を持つため多くの実験環境で使用されています。

一方で、アクリル製の実験用気密容器は非極性溶媒に対しては優れた耐性を示しますが、強酸や強塩基の極性溶媒には弱いため、使用する薬品によって素材を選択する必要があります。

アクリルは特にアセトンやエタノールなどの有機溶媒に対して脆弱で、これらの薬品が使われる実験には不向きです。

このように、アクリル製とガラス製の実験用気密容器はそれぞれ一長一短があり、実験の具体的な要件に基づいて最適な材料を選ぶことが重要です。

当社の加工技術と事例紹介

事例1~真空デシケーター

理化学系の商社様からのご依頼で、既存のカタログ製品ではサイズや形状が要求仕様に合わないため、オーダーメイドにより真空デシケーターを製作加工しました。

具体的な要件に基づき、設計から加工までを一貫して行い、真空状態を維持するための気密性と耐久性を実現しました。

事例2~流路可視化部品

空調機器メーカー様からのご依頼で、流体観察用の透明なアクリル部品を製作しました。

内部の流体動態を観察するため、アクリルの透明性と加工のしやすさを生かし、精密な流路形状を実現しました。

また、表面の曇りを除去するための特別な手仕上げを施し、視認性をさらに向上させました。

事例3~実験用治具

大学研究室様からのご依頼で、提供された図面に基づきオーダーメイドで実験治具の製作を行いました。

図面の微調整から透明度を高めるためのアクリル樹脂の選定、組み立てまでを一貫して行いました。

また、当社は区内協力企業との連携により、樹脂加工だけでなく金属部品の製作も可能なので、あわせてご相談ください。

事例4~SUS配管部品

化学メーカー様からのご依頼で、SUS製の配管部分をアクリルに置き換え、内部の流体の混ざり具合を視覚的に確認できるようにしました。

特定の流体実験のため、異なるコックの配置と穴の大きさを変えることで、多様な条件下での流体の挙動を評価することが可能になりました。

事例5~ベンチュリー管

計測機器メーカー様からのご依頼で、特定の流体動態を評価するために使用されるベンチュリー管を製作しました。

全長200-250mm程度であり、内部を高精度に加工する必要があるため、アクリル加工技術を駆使して、計測精度の向上を図りました。

まとめ

今回は、アクリル製の実験用気密容器のメリットやガラス製容器との違い、使用条件に応じた選定基準を解説し、実際の加工事例をご紹介しました。

岸本工業では、メーカー既製品では対応できない特殊な要求にも柔軟に応じるオーダーメイド品の加工も可能です。

次回の記事では、当社の具体的なオーダーメイド加工事例をご紹介します。

透明性が要求される複雑な形状や、高い気密性を必要とする実験用容器も、お客様のニーズに合わせて設計から製造まで一貫して対応いたします。

お気軽にご連絡ください。

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