はじめに
「フルフラット加工」は、当社独自の工法による、樹脂の高精度板厚加工サービスです。
金属に比べ寸法精度を高めることが難しいとされる樹脂板加工において、公差±0.03mm、表面粗さRa1.6以下を実現しています。
半導体、エレクトロニクス、医療関連機器などの高い寸法精度を求められる業界や各種研究開発機関から高い評価をいただいています。
そこで、本ブログでは、2回にわたって、当社の高精度板厚加工「フルフラット加工」について紹介していきます。
1回目となる今回は、樹脂の切削加工において、製品の寸法精度を高めるためには、材料となる樹脂板の板厚の寸法精度を高めることが重要であることと、その樹脂板の寸法精度を高める岸本工業のフルフラット加工の概要、そして、フルフラット加工のメリットについてお伝えしていきます。
製品の寸法精度を高めるためには、材料の板厚寸法精度から
樹脂は金属に比べて温度変化や吸湿により寸法が変化しやすいため、寸法精度を高めるのが難しい素材です。
そのような樹脂素材で製作する製品において高い寸法精度を実現するためには、まず、加工前の材料である樹脂板の板厚の寸法精度を高めることが重要です。
ここでは、その理由をご説明します。
市販されている樹脂材料の寸法誤差
1つめの理由は、市販されている樹脂板は金属板に比べ板厚寸法のばらつきが大きいためです。
樹脂板メーカーから販売されている樹脂板の板厚に対する寸法公差は通常10%前後あり、場合によっては、規格サイズよりも板厚が薄い場合さえあります。
また、樹脂の特性上、樹脂板材に反りが発生している場合や、樹脂板表面に凹凸がある場合もあるため、そのまま使用すると、精密加工分野において必要とされる寸法公差を満たすことができない恐れがあります。
わずかな誤差も積み重なることによって大きな誤差に
2つ目の理由は、部品一つ一つの寸法誤差はわずかなものだったとしても、それが積み重なると、それらの誤差の累積により大きな誤差が生じてしまうためです。
先ほどお伝えしたように、市販の樹脂板は板厚にばらつきがあります。
例えば、下図のように、各板材の板厚に誤差がなく均一な板厚の場合と、各板の板厚に0.1mmの誤差がある場合を比べると、5枚の樹脂板を重ねた場合、板厚の誤差は合計すると0.5mmとなります。
これを「累積誤差」と言います。
実際には、このように単純に樹脂板を重ねるような製品を製作することはないと思いますが、部品を製作する際に、このような板厚のばらつきを放置して加工を行ってしまうと、部品一つ一つの寸法誤差は許容範囲だったとしても、部品を組み立てた時に、累積誤差によって部品同士が引っかかったり、がたつきが発生したり、といったトラブルをもたらす可能性があります。
樹脂板厚の高精度均一加工と、滑らかな表面粗さを実現する、岸本工業の「フルフラット加工」とは
このような樹脂板材料の寸法誤差問題を解消する手段として、岸本工業は、樹脂板厚の高精度均一加工と、滑らかな表面粗さを実現する、フルフラット加工を提供しています。
フルフラット加工とは
フルフラット加工は、岸本工業が提供する高精度な樹脂板厚加工サービスです。
当社独自の工法を用いることによって、2面フライスでは350mm x 1200mm、6面フライスでは350mm x 1000mmまでの板材を、板厚1.0tから100.0tまでの間で、指定寸法に対して公差±0.03mm以内という高精度な板厚公差を実現しています。
また、表面粗さについても、▽▽▽に対応しており、真空用途にもご利用いただける滑らかさを実現しています。
他社との比較例(MCナイロンで比較した実測値) | ||
フルフラット加工 | 他社製 | |
板厚公差 | ±0.03mm以内 | ±0.1mm以内 |
表面粗さ | Ra 0.287 | Ra 6.150 |
表面画像
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※フルフラット加工については、こちらもご覧ください。
・・・「高精度板厚加工技術(フルフラット加工)」
フルフラット加工のメリット
フルフラット加工には次のようなメリットがあります。
累積誤差の低減
材料の寸法精度が向上することで、組み立てや加工の過程で生じる累積誤差を最小限に抑えることができます。
これにより、高精度が求められる製品の樹脂加工が容易になります。
加工時間の短縮と生産性の向上
フルフラット加工を導入することで、板厚の高精度化が実現し、一次加工の工数が大幅に削減されます。
これにより、生産効率が向上し、コスト削減にも寄与します。
お客様からも、フルフラット加工の材料を使うことで、冶具の精度が増し、後工程の組立性が向上し、冶具製作が短時間でできるようになったというお言葉を頂いています。
環境に優しいエコ調達
フルフラット加工により、切粉や端材、残材の排出が抑制されます。
これにより、産業廃棄物の排出量が削減され、環境への負荷を軽減します。
金属から樹脂への素材転換
フルフラット加工により、均一な板厚の樹脂板を利用した高精度な部品製作が可能となります。
これにより金属から、軽量でサビない樹脂への素材転換の可能性が広がります。
※金属から樹脂への素材転換については、こちらの記事もご覧ください。
・・・「意外と知らない?切削加工を念頭に置いて樹脂製機構部品を設計する際のポイントとは」
まとめ
今回は、岸本工業が独自技術に基づいて提供している、高精度な板厚加工サービス「フルフラット加工」を紹介しました。
フルフラット加工は、半導体、エレクトロニクス、医療関連機器の部品製作のほか、冶具製作や微細加工など、高い寸法精度と面精度が求められる分野で活用されています。
次回は、フルフラット加工の活用例についてお伝えしますので、次回記事も是非ご覧下さい。
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