はじめに
テフロンと聞くと、多くの方がキッチン用品、特にフライパンのコーティング材を思い浮かべるかもしれません。
当記事では、調理器具のコーティングではなく、工業用途でのテフロン樹脂の切削加工についてご紹介します。
「テフロン」はケマーズ社(旧デュポン社)の登録商標であり、正式名称はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)です。
その優れた耐環境特性や物理的特性により、多岐にわたる産業で利用されています。
次項では、テフロンの基本的な特性と、工業用途でどのように利用されるかについて説明します。
テフロン(PTFE)の特徴
テフロンは、その優れた特性から多様な産業で重宝されています。ここでは、テフロンのさまざまな特性について解説します。
耐環境特性
耐熱/耐寒性
テフロン樹脂の使用温度は-100℃から260℃であり、さまざまな環境での利用が可能です。
この特性により、航空宇宙産業や自動車産業における、高温下での機器や部品の絶縁材として利用されます。
耐薬品性
テフロン樹脂は、ほとんどの化学薬品や溶剤に対して非常に高い耐性を持っているため、化学プラントや医療機器でのシール材やコーティング材として広く使用されています。
耐候性
テフロン樹脂は、紫外線や気候変動に強いため、屋外設備や建築材料にも使用されることがあります。
物理的特性
摺動性
テフロン樹脂は、他の樹脂と比較して非常に低い摩擦性を有しているため、潤滑油が使用できない食品加工機械や医療機器に使われることがあります。
絶縁性
テフロン樹脂は、非常に優れた絶縁性を有しており、誘電率や比誘電率が小さく、周波数や温度の影響を受けにくい特徴を持っています。
そのため、電気・電子部品の絶縁体として利用されています。
非粘着性
テフロン樹脂は表面が濡れにくいことから、汚れや液体が付着しにくい性質があります。
そのため、食品製造工程や印刷機の機械部品として使用されています。
上記の通り、テフロン樹脂はさまざまな優れた特性を兼ね備えていることから、多岐にわたる産業分野で活用されています。
テフロンと比較される材料
テフロンと並んで耐熱性・耐薬品性で比較対象となるのがPEEKとPPSです。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、耐熱性が特に高く(連続使用温度が250℃)、耐薬品性や機械的強度にも優れています。
これにより、医療機器や半導体機器などに適していますが、高価であるため性能とコストとのバランスの考慮が必要です。
一方で、PPS(ポリフェニレンスルフィド)は、PEEKよりもコストパフォーマンスに優れ、吸水率が極めて低いため寸法安定性が高く、耐薬品性と耐候性にも優れています。
さまざまな気候条件下で安定した性能を発揮するため、多用途に適しています。
素材選定は、性能だけでなく、コストや環境条件も考慮し、製品に最適な材料を選ぶことが重要です。
岸本工業は、テフロンだけでなく、PEEKやPPSの樹脂加工事例が豊富にあります。
素材の選定に迷われた方は気軽に岸本工業までお問い合わせください。
テフロン切削加工における課題
テフロン樹脂の加工は、そのさまざまな特性から、特有の課題を抱えています。
本項では、テフロン樹脂を切削加工する際の主な課題ついてご説明します。
加工時の熱管理
テフロンは高い耐熱性を持ちますが、加工時には意外と熱に敏感です。
加工中に発生する熱がテフロンを変形させる原因となることがあり、これが寸法精度を低下させる要因になるのです。
このため、低速での加工やエアーブロー等による冷却によって切削部の温度を管理する必要があります。
精密な仕上がりの難しさ
テフロンの柔らかさと弾力性は、非常に精密な仕上がりを求める用途には適していない場合があります。
特に、薄い部品や複雑な形状の加工は、テフロンの材料特性によって一層困難になります。
このため、特殊な工具や加工技術が必要とされることがあり、加工前の設計が非常に重要となります。
加工技術者はこのようなテフロンの特性を深く理解し、適切な加工設備と技術を選択することが求められます。
適切な工具と加工条件の選定は、テフロン加工の成功を左右する重要な要素となります。
💡技術者のマメ知識~テフロン樹脂の寸法精度
当社は高い寸法精度を実現できる技術力を強みとしているため、多くの樹脂素材では、お客様から千分台(µオーダー)の精度で指定を受けることがあります。
しかし、テフロンは上述の通り、寸法精度の確保が非常に困難なので、設計時には約0.1mmの誤差を見込むことを勧めることがあります。
また、輸送中やお客様の実験室の室温でも寸法が変わりやすいため、岸本工業での最終検査時の寸法を承認基準としてご了承いただくことになります。
それだけテフロンは温度変化に敏感な素材なのです。
岸本工業のテフロン加工技術のご紹介
岸本工業では、フッ素樹脂であるテフロン(PTFE)を極薄板厚加工に特化した技術を有しています。
通常、テフロン製のシートや板は、メーカーの製造過程によって厚みが一定に決まっており、市場にはロール状で出回ることが多いですが、この形状が使い勝手に制限をもたらす場合があります。
岸本工業の極薄板厚加工技術は、お客様からのご要望に応じて、より柔軟に板厚を調整することができます。
例えば、メーカー規格の厚み2mmの素材を0.1mmまで薄く切削することが可能です。
まとめ
今回は、テフロン樹脂の切削加工における課題と当社のテフロン加工技術についてご紹介しました。
特殊な環境下で使用する際の選択肢としてテフロンを検討されている場合は、ぜひ岸本工業にご相談ください。
最適な素材選定のご提案から加工までを一気通貫で対応します。
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